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read’大学・中庸’

岩波文庫から出ている本書、漢文・書き下し文・注釈・現代語訳と、様々な情報を載せてくれていますが現代語訳のみ読みました。

前回読んだ論語もそうですが、四書は基本的に道徳による政治の話だと認識しています。為政者向けの本だと思います。

about 大学

特に心に残ったのは大学章句:経(4)-八条目-です。要は、「大きなことを成し遂げたいのであれば、まずは小さく身近なものからステップアップすることが寛容であり、それをなおざりにしては成就しまい。」です。こういったものは様々な国で様々な文脈で語られている頻出名言だと思いますが、やはり心に残りました。

何か大きな目標があるのであれば、まずは成就(to be)と実力(as is)との差異を知り、地に足のついたマイルストーンを起き、一歩ずつ歩むのが良いですね。

about 中庸

全体的に現実離れな話になっちゃっていました。’中庸’自体は2部構成っぽくなっており、1部はよく言う’中庸’について「過ぎたるは、なお及ばざるが如し」のようなthe 中庸なので読みやすく理解しやすいです。2部は’‘について述べています。「ふーん」と言う感じで、あまりしっくりきませんでした。

誠というものは人の作ったものではなく、天の自然にある道である。
この誠というものに心づいて、これに達しよう。得ようと思うのは、人の人たる道である。
学んでこれを知り、つとめてこれを行うのは、人たるものの道である。
このように、誠にいたる心に会っては、なにものもかんどうされないものではない。
誠というものは、すべてのもとになるものである。

《出典:明倫館朗誦教室》

read’現代語訳 論語 (ちくま新書)’

読み始めた動機は四書五経を読破してみたいという好奇心です。あえて原文を載せない配慮のおかげで、テンポよく論語を学ぶことができました。

論語の中で、特に気に入った2つを紹介します。※訳は自分流です


為政第二 10 子曰視其所以章

いわく、もちうるところところやすんずるところさっすれば、ひといずくんぞかくさんや、ひといずくんぞかくさんや。

訳:その人がどう行動し、何をよりどころにし、何に満足するかが分かればその人物ははっきりわかる。隠せるようなものでは無い。

所感:新しい人と出会った際、その人を理解するのに役に立ちそうな指標を得ました。


泰伯第八 17 子曰學如不及章

いわく、がくおよばざるがごとくするも、これうしなわんことをおそる。

訳:学問は際限なく学び続け、学んだことを忘れないか恐れる。そのような心構えで学習するべきだ。

所感:日々学び続けることは必須であるが、学習は身にならないと意味がないということを諭される言葉。論語全体を通して、孔子の学問に対する姿勢を学ぶことができます。(学問以外にも多くの大切な心を学ぶことができます)


1度読んだだけでは、全体の3割も理解できていない感覚です。年に1回は読み、自己の行いや考えを省みたいと思います。また、読み進めるうちに「資本主義の現代で通用するのだろうか」と考えることがありました。そういった問いには論語と算盤/渋沢栄一が答えてくれるのでしょうか、いづれ読んでみます。

read ‘黄色い家/川上未映子’

貧しい家に生まれた少女、懸命に自分の力で生きようとする少女が壊れていく話。600ページの長編小説ではあるが、それを感じさせないスピード感で最後まで駆け抜ける。

学校にも行けず、友達もいなかった主人公。閉塞的な環境で育ったがゆえに思考力が貧困であるが、まともなではある。そんな主人公に毒親などで悩んでいる少女達と友達になる。最初はただの友達だった少女達だが、カード詐欺を経て、責任感の強い主人公がリーダー役になってしまい、役割が人を狂わせる。どこで狂ってしまったのかわからない程、少しずつ狂っていく。

現代も立ちんぼが社会問題となっており、それを批判したり嘲笑したりする人もいるが、”ただ自分がそういう境遇でなかっただけ”なのかもしれないということを念頭に置いて考える必要があるのではないか。

read’世界でいちばん透きとおった物語’

【ネタバレ注意】

小説自体に仕掛けがある作品。私は仕掛け絵本や叙述トリックの類が好きです。
文豪である父の隠し子(父の浮気相手(母)の子供)である主人公。主人公は母に育てられ、プレイボーイである父には嫌悪を抱いていた。
父の死後、遺作があるかもしれないという話を聞いた主人公は、憎い父親ではあったが、遺作の出版による利益や単純な興味から遺作を探す決意をする。
生前父と仲が良かった人々に話を聞き、調査を進める主人公のお話。


ストーリーは”普通に面白い”のレベルです。本作はストーリーが肝ではなく、改行や字下げといった、骨組み自体が非常に特殊な作品です。また、紙媒体でしか再現できない「透け」を利用した作品です。これら仕掛けが終盤で明かされるのですが、以前のページを見返すと鳥肌が立ちます。
「おいおい、、うっそだろ、、?!」と、声に出る衝撃です。


結局見つからなかった父の遺作は、コントラストに著しく敏感な主人公のためだけに書かれた、全ページの文字の配置が統一された文庫本。文字の配置が統一されていれば、裏ページの文字が透けないので。

そして、本作は主人公が執筆した物語で、遺作に倣った形式+読みやすいように文や単語がページを跨らないよう工夫されているというもの。言うは易し行うは難し。
推敲にどれだけ時間をかければ完成する作品なのか。とても良い読書体験でした。