read’世界でいちばん透きとおった物語’

【ネタバレ注意】

小説自体に仕掛けがある作品。私は仕掛け絵本や叙述トリックの類が好きです。
文豪である父の隠し子(父の浮気相手(母)の子供)である主人公。主人公は母に育てられ、プレイボーイである父には嫌悪を抱いていた。
父の死後、遺作があるかもしれないという話を聞いた主人公は、憎い父親ではあったが、遺作の出版による利益や単純な興味から遺作を探す決意をする。
生前父と仲が良かった人々に話を聞き、調査を進める主人公のお話。


ストーリーは”普通に面白い”のレベルです。本作はストーリーが肝ではなく、改行や字下げといった、骨組み自体が非常に特殊な作品です。また、紙媒体でしか再現できない「透け」を利用した作品です。これら仕掛けが終盤で明かされるのですが、以前のページを見返すと鳥肌が立ちます。
「おいおい、、うっそだろ、、?!」と、声に出る衝撃です。


結局見つからなかった父の遺作は、コントラストに著しく敏感な主人公のためだけに書かれた、全ページの文字の配置が統一された文庫本。文字の配置が統一されていれば、裏ページの文字が透けないので。

そして、本作は主人公が執筆した物語で、遺作に倣った形式+読みやすいように文や単語がページを跨らないよう工夫されているというもの。言うは易し行うは難し。
推敲にどれだけ時間をかければ完成する作品なのか。とても良い読書体験でした。

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